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東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)48号 判決

原告

富士通株式会社

代理人

植松宏嘉

弁理士

松岡宏四郎

被告

日本パルスモーター株式会社

代理人

安原正之

外二名

弁理士

志賀武一

外一名

主文

特許庁が、昭和四五年四月六日、同庁昭和四二年審判第七八二七号事件についてした審決を取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一  原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、請求の原因として、次のとおり、述べた。

一  特許庁における手続の経緯

被告は、昭和四二年一一月七日、原告の権利に属する登録実用新案第五七六、一六三号「ステッピングモータ」につき、登録の無効の審判を請求した(昭和四二年審判第七八二七号事件)ところ、昭和四五年四月六日「本件考案を無効とする。」旨の審決があり、その謄本は、昭和四五年四月二五日原告に送達された。

二  本件登録実用新案の考案の要旨〈中略〉

三  本件審決理由の要点

本件考案の要旨は、前項のとおりであるが本件考案の要旨は「FUJI」VOL. 10 No.6(通巻四〇号)(富士通信機製造株式会社発行)三五頁および三六頁(以下、「引用例」という。)に当事者において容易に実施することができる程度に記載されており、引用例は、本件考案の出願前国内に頒布されたものであることが明らかであるから、本件考案は、旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)第三条第二号の規定に該当し、同法第一条の登録要件を具備しないから、同法第一六条第一項第一号の規定により無効とすべきものである。

四  本件審決を取り消すべき事由

本件考案の要旨についての審決の判断は、争わないが、引用例が本件考案の出願前に国内に頒布された旨の審決の判断は誤つている。すなわち、引用例は、本件考案の出願日である昭和三五年二月二二日より後に頒布されたものであり、本件考案出願当時国内に頒布されたものといえなく、この点の認定を誤つた審決は違法として取り消さるべきである。

第二  被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」旨の判決を求め、答弁として、原告の請求原因事実は、全部認める。と述べた。

理由

原告主張の請求原因事実は、被告の認めるところであつて、右争いのない事実によれば、本件審決は取消を免れない。

よつて原告の請求は、これを認容する。(服部高顕 石沢健 奈良次郎)

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